「体験できなかったっていうのも、一つの体験でそれだっていつかは武器になるかもしれないですよ」
涙を誘った第5話、静かな言葉が視聴者の心に届いた理由
4月29日に放送されたドラマ「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」を見ていて、私が心に刺さるセリフのひとつが「一度でいいからいつもありがとう、と言われたかった」「他の人が作った料理を食べたかった」というもの。
家事って、感謝されたくてしているわけじゃないけど、「ありがとう!」って言われるだけで、「私のしていることに価値があるんだ」と思って嬉しくなるんですよ。
やっぱり、他の対価が発生する仕事と違って、家事は「誰でもできること」「母親なら、家事をして当然」という風潮がありますから。
そんな感じで、毎回、多部未華子さんが演じる専業主婦・詩穂の言葉には、共感することが多いのですが、今回も、いろいろありましたね。
「体験できなかったことも一つの体験です。それがいつか武器になるかもしれません」が、SNS上で「胸に刺さった」「気持ちが軽くなった」といった感動の声を集めています。
このドラマは、日々の家事という身近なテーマを通して、それぞれの登場人物が自分の「生き方」を見つめ直していく群像劇。
毎回、母親たちが抱える葛藤や不安が丁寧に描かれ、多くの共感を呼んでいます。
英語教室への戸惑い、そして苺への想い
物語の始まりは、中谷(ディーン・フジオカ)が娘の佳恋(五十嵐美桜)と参加する英語教室に、詩穂(多部未華子)とその娘・苺(永井花奈)を誘う場面からでした。
詩穂は「まだ日本語もおぼつかないのに、英語は早すぎるのでは」と心配しますが、中谷は「体験は、親が子に贈る最強のプレゼント」と語ります。
その言葉をきっかけに、詩穂の心は揺れ動きます。「私が専業主婦であることが、苺の体験の幅を狭めているのではないか」。そんな不安が、彼女の胸を締めつけました。
グランピングで浮き彫りになった“家庭のリアル”
一方で、家族旅行を兼ねたグランピングに行った後、礼子(江口のりこ)と夫・量平(川西賢志郎)の間にすれ違いが見えてきます。仕事では積極的な量平も、家庭では家事や子育てを妻に任せっぱなし。そんな現実に、礼子は「いつも家のことは私だけ」と不満を抱えていました。
この場面には、多くの働く母たちから「わかる」「我が家のことかと思った」という共感の声が寄せられました。ドラマが映し出す“家庭内のズレ”が、社会全体の縮図のようにも感じられます。
苺に対する“申し訳なさ”と、母としての自己評価
詩穂の悩みは、幼い頃の記憶にもつながっていきます。母を亡くし、父と家事を分担していた日々。けれど、仕事に追われた父は、家のことを次第に手放していきました。
その経験から、「私も同じように、苺に寂しい思いをさせてしまうのではないか」と、詩穂は自分を責めてしまいます。
そんな彼女に、礼子がやさしく言った一言。「詩穂さんは、毎日いろんなものを苺ちゃんにあげてるよ」。この言葉が、詩穂の心にそっと灯をともしました。
“体験”の本当の意味を見つめて
中谷との会話の中で、彼の過去も語られます。彼が受け取った“体験”の多くは、詰め込みのような学習ばかり。そんな息苦しさに苦しんだ記憶を、彼は今も忘れていません。
その過去に触れながら、詩穂は静かに語りかけました。「体験できなかったことも、一つの体験なんです」。この言葉には、経験の有無だけでは測れない“人生の意味”が込められていました。
視聴者の中には「できなかったことにも価値があると気づけた」「今の自分を肯定できた」といった声が多く寄せられ、SNSは共感の言葉であふれています。
毎日の小さな出来事こそ、子どもにとっての宝物
詩穂が最後にたどりついた答えは、日常の中にこそ“かけがえのない体験”がある、という気づきでした。高価な教材や特別な習い事だけが、子どもを成長させるわけではありません。
毎朝の「おはよう」、一緒に食べるごはん、手をつないで歩いた公園の帰り道。そんな何気ない時間が、子どもの心を育てる大切な土壌になっていくのです。
第5話は、子育てをするすべての人に向けた、そっと背中を押すようなメッセージに満ちた回でした。「対岸の家事」は、小さな家族の物語を通じて、私たちの“生き方”に優しく問いかけてくれます。次回の展開も、きっとまた新たな気づきを与えてくれることでしょう。