日本テレビ系で放送中の日曜ドラマ『ホットスポット』が大きな話題を呼び、ロケ地となった山梨県富士吉田市には聖地巡礼を目的とした観光客が殺到している。特に、劇中に登場した老舗の喫茶店には長い行列ができ、地元の飲食店や観光スポットがにぎわいを見せている。その背景には、地元の観光団体が放送翌日にロケ地を紹介するなどの迅速な情報発信がある。
もともと富士吉田市や隣接する富士河口湖町は、雪をかぶった富士山を撮影する訪日外国人観光客に人気のエリアだったが、『ホットスポット』の影響で若い日本人観光客も急増。地域にとって、新たな観光資源となっている。

富士吉田市のおすすめ観光スポット15選

待ち時間2～3時間が当たり前！老舗喫茶店「もんぶらん」の人気ぶり

富士吉田市役所からほど近い静かな通りにある喫茶店「もんぶらん」。昭和55年創業のこの店は、白い外壁に青色の看板が映えるレトロな雰囲気の老舗だ。開店時間は午前11時半だが、平日の午前11時40分にはすでに30人ほどの行列ができるという。
ドラマでは、主演の市川実日子さんが中学時代の友人役の鈴木杏さん、平岩紙さんとともに食事を楽しむシーンが第1話から描かれており、この店がドラマの象徴的なロケ地となった。

もともとは地元の住民や高校生に愛されてきた店だが、現在は観光客が圧倒的に多い。駐車場には県外ナンバーや「わ」ナンバーのレンタカーがずらりと並ぶ。東京から訪れた女子大学生は「SNSで話題になっていて、ずっと行きたかった」と話す。

フロアを担当するマスターの奥さんによると、土日には50人以上の行列ができることもあり、平日でも2～3時間待ちは当たり前の状態になっている。しかし、店側は特別な対応は取らず、通常通り約250種類のメニューを提供し続けている。「寒い季節なのでドリアがよく出るほか、ドラマに登場したパフェ『かくれんぼ』が人気」とのこと。「ほとんどの人が料理の写真を撮ってSNSに載せる」とも語り、聖地巡礼ブームの広がりを実感している様子だ。

放送翌日にロケ地情報を公開！観光団体の迅速な対応が人気を後押し

ドラマのロケ地巡りは、放送が終了してからじわじわと広まることが多い。しかし、『ホットスポット』に関しては、放送直後から訪問客が急増した。その背景には、地元の観光団体「一般社団法人ふじよしだ観光振興サービス」の迅速な対応がある。

同団体のホームページ「富士吉田市観光ガイド」では、ドラマに登場した富士吉田市内のロケ地を特集して紹介。2月27日時点で、「もんぶらん」や「青龍飯店」、「いちやまマート城山店」といった店舗のほか、「富士みち（本町通り）」「金鳥居」など富士山の絶景スポットや、飲み屋街「西裏地区」など、合計16カ所のロケ地が掲載されている。写真や地図、住所、観光ガイドが揃っており、訪れたい人にとってわかりやすい情報が提供されている。

特集を担当する小俣侑樹さんによると、「広域観光グループのメンバーで作成している」とのこと。日曜日のドラマを見た後、翌月曜日の午前中にはロケ地の写真撮影や情報収集を行い、早ければ月曜日の午後にはホームページに掲載するというスピーディーな対応を取っている。
この取り組みが功を奏し、アクセス数は好調。同法人が手掛ける訪日外国人向けの「新倉山浅間公園桜まつり」特集に匹敵するほどの注目度となっている。小俣さんは「今後もドラマが続く限り、新たなロケ地を紹介していきたい」と意気込む。

地元首長も期待！『ホットスポット』効果で観光振興へ

ドラマの影響で観光客が増えたことに、地元の富士吉田市や富士河口湖町の首長たちも大きな期待を寄せている。

富士吉田市の堀内茂市長は、2月14日の定例記者会見で『ホットスポット』について言及。「富士みちなど、すぐにわかるスポットがたくさん登場するので、ぜひ皆さんにも見ていただきたい」と、まるで番組の宣伝をするかのような発言をした。

また、ドラマの舞台となるホテルがある富士河口湖町の渡辺英之町長は、同町の令和7年度予算案発表の記者会見で「ドラマの影響が大きく、驚いている。ぜひ続編やパート2をお願いしたい」と笑顔で語った。

もともとこの富士北麓地域は、富士山を目当てにした訪日外国人観光客による観光特需を享受してきた。しかし、『ホットスポット』は地元の日常風景を多く描いており、これまで訪れることが少なかった若い日本人観光客の流入を生み出している。

富士山観光とインバウンド需要に頼るだけでなく、国内の観光客にも新たな魅力を提供できるチャンスとあって、地元の期待は高まるばかりだ。ドラマの放送が続く中、さらなる観光ブームの到来が予想される。