透き通るようなハスキーボイスと感傷的なメロディで多くの人の心をつかんできた歌手・徳永英明。その音楽の才能を受け継ぎ、新たな道を歩み始めた息子がいる。彼の名はレイニ。名前の由来は、徳永の代表曲「レイニー ブルー」にあるという。彼は幼少期から音楽に触れ、俳優としても活動しながら着実にキャリアを築いてきた。
親の七光りを避け、独自の道を歩んだ青年
「自分の歌声がハスキーだと言われるけれど、実はあまり自覚がない。でも、聴いていて心地よい、気持ちいいと言ってもらえるのが一番嬉しくて、自信になる」──そう語るのは、現在26歳のレイニ。彼は2024年に放送されたドラマ『相続探偵』(日本テレビ系)の主題歌「ラストレター」を担当し、歌手デビューを果たした。
彼は2019年頃からモデルや俳優として活動を開始し、映画『レジェンド&バタフライ』やドラマ『相棒 season23』にも出演。端正な容姿や演技力に加え、SNSで披露する透明感のある歌声が注目されてきた。
「本来ならば、もっと早く注目されてもよい“出自”なのですが、レイニさんは徳永英明さんの次男です。これまで公表はしてこなかったものの、彼の名前が『レイニ』であることから、ファンの間で徐々に噂が広まりました。『レイニー ブルー』と結びつけるのは自然な流れですよね」(音楽関係者)
父・徳永英明が背負った苦難と、息子への思い
徳永英明は福岡県出身。高校卒業後、歌手を目指して上京したが、デモテープを持参してもレコード会社に相手にされず、アルバイト生活が続いた。だが、24歳のときに「レイニー ブルー」でデビューを果たし、その甘くハスキーな歌声が女性たちの心をつかんだ。さらに「壊れかけのRadio」などのヒット曲を連発し、一躍トップアーティストの仲間入りを果たした。
私生活では、1994年に雑誌『CanCam』の専属モデルだった女性と結婚。彼女は、徳永が喉のポリープ手術を受けた際、献身的に支えたことで絆を深めたという。1995年に長男、1998年に次男・レイニが誕生。
「レイニさんが生まれたころ、徳永さんは自らの歌手活動について悩んでいました。バラードの枠にとらわれず新たな曲作りに挑戦しましたが、思うような成果が出ず、一時はファンが離れ、自分の居場所を見失ったと感じていたそうです」(レコード会社関係者)
そんな中、徳永は単身でフランスやアメリカを訪れ、スペイン・バルセロナの語学学校に通うことで自分を見つめ直した。そして改めて「バラードシンガーとしての自分」を再確認し、ちょうどその時期に生まれた息子に「レイニ」と名付けた。これは、原点に立ち返るという意味が込められていたのかもしれない。
しかし、その後も徳永の歌手生活には試練が続いた。2001年、40歳のときにもやもや病を発症。これは脳に血液を運ぶ動脈が細くなり、血行が低下する難病である。最悪の場合、脳出血を引き起こし、死に至る危険もあった。そのためデビュー15周年の全国ツアーも休止せざるを得なかった。
休養を経て、徳永は2002年に復帰。2006年にはNHK紅白歌合戦に初出場し、「壊れかけのRadio」を熱唱。改めてその歌唱力を世に知らしめた。
父の背中を見て育ったレイニ、音楽への目覚め
徳永英明は自身の子育てについて多くを語ってこなかったが、著書『半透明』の中でこう記している。
「僕は親や両親が期待していたような人間になることに反発してきたから。子どもたちは、自分の好きなことを持って、僕が何かあったときにサポートできればいい。あまり細かく言わないようにしている」
この方針のもと、レイニは自由に成長した。幼少期にはサッカーやピアノに親しみ、中学ではジャムセッション部に所属。ギターやドラムを担当しながら音楽への興味を深めた。そして高校時代、彼は思春期の葛藤の中で一人アメリカに渡ることを決意する。
「留学中、コーラスの授業でソロを担当することになり、緊張で足が震えながら歌ったところ、観客がスタンディングオベーションを送ってくれたんです。その瞬間、『歌によってこんな世界が見えるのか!』と、人前で歌うことに魅了されたそうです」(芸能関係者)
彼はロックバンド『ONE OK ROCK』に憧れており、海外での活躍を目指しているという。現在、彼が所属しているのは小栗旬が社長を務める大手事務所で、その期待の高さから“秘蔵っ子”とも言われている。
父を超える存在になれるか──未来への挑戦
レイニの事務所に、徳永英明との関係や名前の由来について尋ねると、次のような回答があった。
「(レイニが徳永の次男であることは)事実です。名前にはさまざまな思いが込められていると思いますが、楽曲名も一つの由来ではないかと思います」
彼が将来の目標として語ったのは、「さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ」。これは、ONE OK ROCKのライブを観た後に抱いた夢だという。
父・徳永英明が数々の試練を乗り越え、唯一無二のバラードシンガーとして確固たる地位を築いたように、レイニもまた、自らの音楽を武器に新たなステージへと歩んでいく。その姿を、父はどんな思いで見守っているのだろうか。
夢に向かって進む息子の姿は、かつての自分を映し出しているのかもしれない。