「おむすび」第16週の大胆な挑戦:主人公不在で描かれる神戸の物語
NHK連続テレビ小説『おむすび』が放送中だ。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんな困難にも自分らしさを貫き、“ギャル魂”を胸に人々の心と未来を結ぶ姿が描かれる「平成青春グラフィティ」。その魅力的なストーリーが視聴者を魅了している。特に注目を集めているのが、第16週から始まった“ヒロイン不在”という異例の構成だ。
もしや、橋本環奈さんに何かトラブルが?なんて勘ぐってしまいそうですが、ちゃんとした理由があるようです。
主人公不在の物語が生まれた背景
第16週では、結が管理栄養士国家試験に向けて本格的に勉強を開始。その間、物語の中心は神戸の米田家に移り、姉の歩(仲里依紗)を中心に展開される。この構成について、制作統括の真鍋斎氏は「思いつきではなく、当初から予定していた展開」と語る。彼は、「朝ドラのような長編ドラマでは、主人公以外の人々の背景を描くことができるのが大きな魅力」とし、この大胆な構成を取り入れた意図を明らかにした。
また、橋本環奈の多忙なスケジュールを考慮した結果ではないかという憶測については、「『紅白歌合戦』の司会が決まったのは放送スケジュールが確定した後で、直接の影響はない」と説明。ただし、1年間のスケジュール調整が必要だったことも認めており、全体の進行を考慮した結果の構成だと強調した。
神戸の商店街と歩の葛藤を描く挑戦
この2週では、阪神・淡路大震災から時を経た神戸の商店街の現状と、姉・歩の内面にスポットが当てられている。真鍋氏は「震災から10年後には商店街の復興が進んだものの、昔のような活気を取り戻すにはさらに時間が必要だった」と語る。こうした現実を描くため、取材を重ねて背景を緻密に描写したという。
さらに、糸島編から続く姉妹の物語としての視点も重要だ。真鍋氏は「『おむすび』はシスターフッドの物語でもある」と位置づけ、結の不在期間に歩の物語を掘り下げる意図を明らかにした。
東日本大震災を思う感覚と歩の成長
演出を担当した松木健祐氏は、歩の物語について「東日本大震災から1年ほど経ったときの感覚を意識した」と語る。直接的な被災地支援ができないもどかしさや、日常を送りながら何かに貢献したいという思いが、歩の葛藤として描かれている。松木氏は「歩の傷や葛藤を掘り下げながら、仲里依紗さんの持つ魅力を多面的に描くことを目指した」とし、この2週が彼女の演技力を存分に引き出す場となったと語った。
注目の第80話とアキピーの登場
明日放送される第80話では、渡辺直美が演じるアキピーが本格登場する。古着屋「ガーリーズ」での窃盗事件をきっかけに、不穏な空気が漂う神戸の商店街。アキピーが歩にどのような影響を与えるのか、視聴者の関心は高まっている。
多様な視点で描かれる「おむすび」の魅力
『おむすび』第16週は、主人公不在という異例の展開ながら、深いテーマを掘り下げ、物語に新たな深みを加えた。阪神・淡路大震災の傷跡、姉妹の絆、そしてそれぞれの成長。多様な視点で描かれるこのドラマは、視聴者に強い印象を残し続けている。