2025年8月29日に全国公開される映画『九龍ジェネリックロマンス』は、眉月じゅんさんの人気漫画を原作とした話題作。
主演を務めるのは、透明感と柔らかさを併せ持つ吉岡里帆さんと、内面の深さを感じさせる水上恒司さん。
このお二人の共演作品というだけで、期待大ですよね。
漫画の世界観をどのように実写化するのか、そして、お二人の演技がどのように物語を彩るのか、公開を前に気になるポイントをご紹介します。
『九龍ジェネリックロマンス』とは――原作と実写の魅力
原作『九龍ジェネリックロマンス』は、かつて香港に存在した九龍城のような異国情緒あふれる架空の都市「九龍」を舞台にしたラブストーリー。
記憶を失った女性・鯨井令子と、過去を語らない男性・工藤発の不思議な関係が描かれています。
実写映画では、吉岡さんが鯨井令子を、水上さんが工藤発を演じています。
舞台となる九龍のビジュアルは、湿度を帯びた街並みや、どこか懐かしいノスタルジーを感じさせる映像で、観る人の心に深く残るでしょう。
また、本作の魅力は「触れること」「記憶」「真実と幻想」のテーマにあり、ただのラブストーリーではありません。
感情の揺らぎや“すれ違い”を丁寧に描写することで、恋愛の切なさがより濃厚に表現されていますね。
原作の持つ不思議な空気感をどこまで再現できるかが、実写版の見どころのひとつです。
吉岡里帆のキャリアと役柄分析
吉岡里帆さんは、『見えない目撃者』(2019年)や『レンアイ漫画家』(2021年)、『ハケンアニメ!』(2022年)など、幅広いジャンルで活躍してきました。どの作品でも、感情の機微を繊細に演じる力が高く評価されています。今回の鯨井令子という役柄は、明るさと影の両面を持つキャラクター。記憶をなくしている女性という難しい設定を、吉岡さんならではの静かな演技で表現しているのが印象的です。
予告編では、「ただの錯覚で、触れられたいと思いますか?」という台詞に彼女の心情がにじみ出ており、その一言で映画全体のムードが伝わってくるほどの表現力を感じました。これまでの代表作と比べても、かなり内面にフォーカスした役柄となっており、新境地とも言えるのではないでしょうか。
水上恒司の演技力と過去作品
水上恒司さんは、『死刑にいたる病』(2022年)での衝撃的な演技により、実力派俳優として一躍注目されました。ほかにも『中学聖日記』『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』などで、柔らかな優しさと芯の強さを併せ持った役柄を多く演じています。
今回の工藤発役は、過去に秘密を抱えたキャラクターでありながら、表面上はごく普通に日々を送っているという二面性が求められる難しい役どころです。水上さんの表情の奥行きや沈黙の演技が、このキャラクターの“語らない過去”を観客に伝えてくれます。
また、吉岡さんとの対話シーンでは、「私を見てください」と彼女が感情を爆発させる場面に対して、静かに受け止める水上さんの姿が印象的で、2人の演技の“対比”が物語に緊張感と深みを与えています。
吉岡×水上 初共演の化学反応とは
これまで別々のジャンルや世界観で活動してきた吉岡里帆さんと水上恒司さん。意外にも本作が初共演となります。その化学反応は、予告編だけでも十分に感じられるほど。二人が演じる令子と工藤の“何かを秘めた関係性”は、見る者の心をざわつかせます。
吉岡さんの柔らかさと、水上さんの静かな緊張感。このコントラストが、作品全体の雰囲気を形成しています。言葉を交わすこと以上に、目線や間の取り方にこだわった演出が多く、観る側に“感情を読み取らせる”ような余白のある演技が特徴です。
まさに、“初共演なのにここまで心の距離が近いのか”と思わせるほどの親和性。劇場でふたりの芝居を目の当たりにすることで、さらにその印象は深まるでしょう。
共演キャストとの関係性と相乗効果
本作では、脇を固めるキャスト陣も豪華です。竜星涼さんや栁俊太郎さん、乃木坂46の梅澤美波さん、花瀬琴音さん、そして香港出身のフィガロ・ツェンさんなど、個性豊かな俳優が揃いました。
それぞれのキャラクターが、吉岡さんや水上さんの役柄にどう絡んでいくのかも、見どころのひとつです。とくに、梅澤美波さんが演じる役は、物語の真相に近づく存在として重要な立ち位置にあるとされており、彼女のフレッシュな演技が作品に新しい風を吹き込んでいます。
また、全体のキャスティングには“静と動”のバランスが意識されており、それが物語にリズムを与えています。派手な演出ではなく、丁寧な演技の積み重ねで心を動かす作品として仕上がっている印象です。
主題歌“HAZE”が映像にもたらす余韻
本作の主題歌は、5人組バンドKroiが書き下ろした新曲“HAZE”です。Kroiは、「九龍の街の匂いや湿度を感じながら作った」とコメントしており、まさに映像と一体となった楽曲に仕上がっています。
音数を抑えたサウンド、ミステリアスなコード進行、そしてどこか懐かしい歌声が、九龍という空間の空気感と絶妙にマッチしています。映画のエンディングでこの曲が流れることで、観客の心に余韻が残る構成になっているのではないでしょうか。
音楽が物語に与える影響は大きく、“HAZE”は本作のテーマである「曖昧さ」や「記憶の揺らぎ」といった要素を、音で表現してくれています。
今後の注目と展望――なぜこの映画が特別なのか
『九龍ジェネリックロマンス』は、単なるラブストーリーではありません。過去と現在、記憶と幻想、そして触れられそうで触れられない心の距離感といった、繊細なテーマを映像で表現した作品です。
吉岡里帆さんと水上恒司さんの初共演は、それ自体が大きな話題性を持っていますが、それ以上に「新たな演技の可能性」を示した作品として評価されることでしょう。
今後、2人が再共演する可能性や、別のジャンルでの共演を見てみたいと思わせてくれるほど、魅力あふれる仕上がりとなっています。