「英語が話せたら…」そんな気持ちで始めた勉強で、こんなに悩むことになるなんて
「英語が話せたら、もっと世界が広がるだろうな」
そう思って、あなたは今、この記事を読んでくれているのかもしれません。そして、スマホの検索窓に「英語 勉強法」と打ち込み、次々と現れる情報に圧倒されてはいないでしょうか。
- 「1日5分、聞き流すだけ!」
- 「科学的に正しい、最強の英単語暗記法」
- 「ネイティブが毎日使うフレーズ100選」
- 「おすすめオンライン英会話、徹底比較!」
書店に並ぶ無数の教材、YouTubeで熱弁を振るうインフルエンサー、友人が「これ良かったよ」と勧めてくれるアプリ…。情報が多すぎて、どれが本当に自分に合っているのか分からない。気づけば、勉強法を調べるだけで1週間が過ぎ、結局何も始められないまま、そっとブラウザを閉じる…。
かつての私が、まさにそんな「英語勉強法・迷子」でした。今日は、そんな私がどうやって情報の波から抜け出し、自分だけの学習ルートを見つけて着実に歩み始めたのか、少し恥ずかしい失敗談も交えながら、その全プロセスをお話ししたいと思います。
もしあなたが今、同じように迷いの霧の中にいるのなら、この記事がその霧を晴らすための小さな灯りになれば嬉しいです。
ノウハウコレクターだった私の「やらない理由」探し
社会人3年目、海外の取引先とメールでやり取りする機会が増え、「やっぱり英語、必要だな」と一念発起。しかし、私の英語学習は「始めるまで」が本当に長かったのです。
まず手に取ったのは、定番のTOEIC対策本。分厚い文法書を前に「うーん、学生時代もこれで挫折したんだよな…」と、数ページで断念。
次に「リスニングが大事だ!」と、聞き流し教材の無料お試しに登録。通勤中にイヤホンで流してみるものの、BGMのように右から左へ抜けていくだけ。「本当にこれで上達するの?」という疑念が拭えません。
SNSを開けば、「シャドーイングが最強」「いや、瞬間英作文こそがスピーキングへの近道だ」と、様々な意見が飛び交っています。どれも正しく聞こえて、全部試さなきゃいけないような気になってくる。
しまいには、様々なオンライン英会話サービスの口コミを読み漁り、料金プランや講師の国籍を比較するだけで満足してしまう始末。「A社は安いけど予約が取りにくいらしい」「B社は質が高いけど、今の自分にはレベルが高すぎるかも…」
気づけば私は、完璧な勉強法、完璧な教材、完璧なタイミングを探し求める「ノウハウコレクター」になっていました。そして、心の中ではこう呟いていたのです。
「まだ最適な方法が見つかっていないから、始められない」
「今のやり方で失敗したら、時間もお金も無駄になる」
これは、英語ができないことへの言い訳でした。「始めない」ための「やらない理由」を、無意識に探していたのです。勉強法探しに疲弊し、結局何も行動を起こせない自分に嫌気がさしながら、時間だけが過ぎていきました。
なぜ私たちは「勉強法」の迷子になるのか?
あなたにも、似たような経験はありませんか? この「迷子」の状態に陥るのには、いくつかの共通した心理が働いています。
- 目的が曖昧すぎる: 「英語が話せるようになりたい」という目標が、あまりにも漠然としているケース。「なぜ?」「何のために?」「どのレベルまで?」がフワッとしているため、どんなスキルを優先的に鍛えればいいのか分からず、手当たり次第に情報を集めてしまうのです。
- 完璧主義の罠: 「どうせやるなら、一番効率的で、絶対に失敗しない方法で始めたい」という思いが強すぎると、行動へのハードルがどんどん上がってしまいます。100点満点のスタートを切ろうとするあまり、0点(未着手)の状態から抜け出せなくなるのです。
- 他人との比較: SNSなどで「この方法でペラペラになりました!」という成功体験を見ると、「自分も同じ方法でやらなければ」と焦ってしまいます。しかし、その人とあなたでは、現在の英語レベルも、確保できる時間も、興味関心も、すべてが違います。他人の正解が、自分の正解とは限らないのです。
この堂々巡りから抜け出すために必要だったのは、新しい画期的な勉強法ではありませんでした。 外側に向いていた意識を、自分の内側に向けること。 それだけだったのです。
迷いを乗り越えた、たった3つの思考整理ステップ
ある日、いつものように勉強法を検索して疲弊していた私は、ふと、すべてのタブを閉じ、PCの電源を落としました。そして、1枚の紙とペンを取り出しました。
「もう、探すのはやめよう。まずは、自分のことを知ることから始めよう」
そう決意し、取り組んだのが以下の3つのステップです。このシンプルな思考の整理が、私の英語学習の羅針盤となってくれました。
ステップ1:目的地の解像度を上げる – 『なぜ、なんのために英語を?』
まず私が紙に書き出したのは、「なぜ英語を勉強したいのか?」という問いです。最初は「仕事で使いたいから」「海外旅行を楽しみたいから」といった、ありきたりな答えしか出てきませんでした。
そこで、さらに深く、具体的に掘り下げてみることにしました。「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)」 を使って、自分が英語を使っている未来のワンシーンを、映画の脚本を書くように詳細にイメージしていくのです。
<私の例:仕事で使いたい>
- Before(曖昧な目的): 仕事で英語を使えるようになりたい。
- After(具体的な目的)
- いつ? → 3ヶ月後の海外支社との定例Web会議で。
- 誰が? → 私が。
- どこで? → 自分のデスクで、PCに向かって。
- 何を? → プロジェクトの進捗について、自分の担当部分を簡単な英語で報告し、同僚からの質問に最低限答えられるようになりたい。
- どのように? → 流暢じゃなくていい。詰まってもいいから、事前に準備した原稿を読みつつ、自分の言葉で伝えようと努力している姿。
ここまで具体的にすると、ぼんやりとしていた「仕事で英語」が、「Web会議での簡単な口頭報告」 という、非常に具体的な目標に変わりました。すると、今自分に必要なのは「ネイティブ並みの発音」や「膨大な単語量」ではなく、「ビジネスで使う定型文のインプット」と「それを口に出して言う練習(スピーキング)」 だということが、ハッキリと見えてきたのです。
あなたもぜひ、紙に書き出してみてください。「海外旅行」なら、「どこの国で?」「どんな場面で?(ホテルのチェックイン、レストランでの注文、道端で道を尋ねるなど)」と掘り下げることで、必要なスキルが明確になります。
このステップのゴールは、「自分だけの学習の北極星」を見つけることです。
ステップ2:現在地を正直に知る – 『今の自分レベルと使えるリソースは?』
目的地が定まったら、次に行うのは「現在地の確認」です。カーナビも、現在地が分からなければルートを検索できませんよね。
ここでのポイントは、見栄を張らず、理想を語らず、ありのままの自分を直視することです。
1. 英語レベルの把握
- 「中学英語も忘れたかも…」
- 「文法はなんとなく分かるけど、全く話せない」
- 「単語力だけは自信がある」
自分のレベルを客観的に知るために、オンラインで受けられる無料の英語レベルチェックなどを活用するのもおすすめです。大切なのは、「自分は今、ここにいる」という事実を認めること。ここがスタートラインです。
2. 使えるリソースの棚卸し
次に、学習に使える「資源」を書き出します。
- 時間: 1日にどれくらい時間を確保できるか?
- (理想)「毎日1時間!」→(現実)「平日は通勤中の20分と、寝る前の10分。休日は1時間くらいなら…」
- ポイント: 無理な計画は挫折のもと。「絶対に確保できる最低限の時間」を書き出すのがコツです。
- お金: 毎月、英語学習にいくらまで使えるか?
- (例)「月3,000円までなら」「参考書1冊分ならOK」「しばらくは無料でやりたい」
- 場所・ツール: どこで勉強するか?何を使うか?
- (例)「静かな自室の机」「通勤電車の中」「スマホとイヤホン」「PCとノート」
この作業を通して、例えば「平日はスマホアプリで15分、週末にオンライン英会話を25分」といった、自分の生活スタイルに合った、現実的な学習計画の骨格が見えてきます。
このステップのゴールは、「地に足のついたスタートライン」に立つことです。
ステップ3:『まず1ヶ月』と期限を切り、1つの方法に絞って実験する
目的地(ステップ1)と現在地(ステップ2)が明確になれば、膨大に見えた勉強法の選択肢は、驚くほど絞り込まれているはずです。
例えば、私の場合、
- 目的地: Web会議で簡単な進捗報告ができる
- 現在地: 中学レベルの文法はOK、スピーキングは壊滅的
- リソース: 平日30分、PCとスマホが使える
この条件から導き出した学習法は、「ビジネスシーンで使える瞬間英作文のアプリを、毎日15分やる」 という、たった一つのシンプルなものでした。
ここで最も重要なのが、「まず1ヶ月だけ、これだけをやってみる」 と決めることです。
「この方法が本当にベストなのか?」という迷いは、一旦脇に置きます。これは「お試し期間」であり、「実験」なのです。効果があるかどうかは、やってみなければ分かりません。大切なのは、行動して「自分に合うか、合わないか」のデータを取ることです。
もし1ヶ月続けてみて、「意外と楽しい!」「少し口から英語が出るようになった!」と感じれば、そのまま続ければいい。もし「苦痛でしかない」「全く効果を感じない」と思ったら、その方法はあなたに合わなかった、という貴重なデータが得られたということです。そしたら、また別の方法を1ヶ月試せばいいのです。
完璧な計画を立てて1年悩むより、不完全でも1ヶ月行動する方が、100倍前に進めます。
このステップのゴールは、「小さな一歩」を踏み出し、学習を「行動」のサイクルに乗せることです。
「自分もできそう」を生み出す、継続のための小さな工夫
こうして、たった一つの学習法に絞って歩き始めた私ですが、もちろん毎日モチベーション高く続けられたわけではありません。疲れて何もしたくない日もありました。そんな時に私を支えてくれた、継続のための小さな工夫もご紹介します。
- ハードルを極限まで下げる: 「机に向かってテキストを開く」のはハードルが高い日もあります。そんな日は、「ベッドに寝転がったままアプリを開くだけ」「歯を磨きながら、覚えたフレーズをブツブツ呟くだけ」でもOKとしました。「ゼロか100か」ではなく、「1でもやれば花丸」というルールです。
- 学習を記録し、可視化する: 手帳やカレンダーに、勉強した日はシールを貼るようにしました。シールが並んでいくのを見ると、「おお、今週は結構頑張ったな」と小さな達成感が得られます。この「できたこと」の可視化が、自己肯定感を高めてくれました。
- 環境を味方につける: スマホのホーム画面の一番押しやすい場所に、英語学習アプリを配置しました。SNSを開く前に、自然とアプリが目に入るようにする。こうして、「意志の力」に頼るのではなく、「仕組み」で継続をサポートしました。
完璧な勉強法を探す旅の終わり
「英語 勉強法 多すぎて迷う」
このキーワードで検索していたかつての私は、「どこかに存在するはずの、たった一つの完璧な答え」を探し求めていました。しかし、そんなものはどこにもありませんでした。
本当の「正解」とは、外から与えられるものではなく、自分自身の目的と現在地を深く理解し、行動し、試行錯誤する中で、自分で作り上げていくものだったのです。
今、私はあの頃のように迷うことはありません。自分の目的地に向かって、自分に合ったペースで、自分だけのルートを歩いているからです。もちろん、今でも流暢に話せるわけではありません。しかし、Web会議で簡単な報告ができるようになり、海外からのメールに怯えることもなくなりました。あの時、情報の海から顔を上げ、自分と向き合ったおかげです。
この記事を読み終えたあなたへ。
もしよろしければ、今すぐスマホを置いて、一枚の紙とペンを用意してみてください。そして、たった5分でいいので、書き出してみてほしいのです。
「あなたが英語を話せるようになったら、どんな素敵なことが待っていますか?」
その問いへの答えこそが、あなたの長い旅の始まりを告げる、最初のコンパスになるはずです。
もう、迷わなくて大丈夫。あなただけの冒険を、今日、ここから始めてみませんか。