辻村深月著『朝が来る』の感想は?
「子どもを、返してください」
ある日、かかってきた一本の電話。それは、長く辛い不妊治療の末に、特別養子縁組で男の子を家族に迎えた栗原佐都子の日常を揺るがすものでした。電話の主は、息子・朝斗の産みの母親、片倉ひかりを名乗る女からだったのです。
今回は、私の心を鷲掴みにして離さない一冊、辻村深月さんの『朝が来る』をご紹介します。
書籍の基本情報
- 本のタイトル: 朝が来る
- 著者名: 辻村深月
- ジャンル: 社会派ミステリー、小説
本の概要
この物語は、二人の「母」の視点から描かれます。
一人は、長く苦しい不妊治療の末に「母」になることを諦め、特別養子縁組という光を見出した佐都子。もう一人は、14歳という若さで予期せぬ妊娠をし、我が子を手放すというあまりにも過酷な決断をしたひかり。
6年間、愛情をたっぷり注いで朝斗を育ててきた佐都子たちの前に、突如現れたひかり。彼女の真の目的は何なのか?平穏だった家族の時間は、少しずつ形を変えていきます。これは、単なる家族の物語ではありません。「母性」とは何か、「家族」とは何か、そして「生きる」とはどういうことなのかを、深く、鋭く問いかけてくる、魂の物語です。
感想とレビュー
もう、胸がえぐられるようでした。
正直に言うと、読み進めるのが辛い場面もたくさんありました。佐都子の不妊治療の苦しみ、ひかりが社会から孤立していく絶望。どちらの気持ちも痛いほど伝わってきて、何度も本を閉じては天を仰ぎました。
でも、それでもページをめくる手が止まらなかったのは、辻村さんの描く人物たちの「生」の力強さがあったからだと思います。彼女たちの喜びも、悲しみも、怒りも、すべてがリアルで、読んでいるうちに、まるで自分のことのように感じてしまうんです。
特に印象的だったのは、それでも「母」であろうとする二人の姿です。血の繋がりだけではない、もっと深い魂のレベルで結びついていく家族の形に、涙が止まりませんでした。ミステリーとしての側面もあり、終盤明らかになる事実に、あなたはきっと驚愕し、そして、再び涙することでしょう。
おすすめの読者層
- 子育てに奮闘するすべてのお父さん、お母さん
- 「家族の形」について、改めて考えるきっかけになるはずです。
- 「母と娘」の関係に悩んだことがある人
- ひかりと彼女の母親の関係性は、多くの人が共感する部分があるのではないでしょうか。
- 心を揺さぶる物語を読みたい人
- 辻村深月さんの真骨頂ともいえる、人間の深い感情を描いた傑作です。
評価
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(5/5)
評価理由:
物語の構成、登場人物の心理描写、社会問題への切り込み方、すべてにおいて完璧でした。読後、自分の人生や家族について深く考えさせられる、まさに「生涯の一冊」となりうる作品です。読書体験として、これ以上ない感動を味わえました。
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きっと、あなたの心にも、温かい「朝」が来るはずです。