PR

ドラマ『あんぱん』屋村が乾パン製造を拒否した理由とは?戦時下の葛藤と朝田家の決断

コラム

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第44話では、朝田パンに舞い込んだ乾パン製造の依頼を巡る騒動が描かれましたね。パン職人の屋村(阿部サダヲ)がその依頼を強く拒否する展開に、SNSでは「なぜ焼かないのか?」「ヤムさんが焼かないなら朝田家で焼けば良いのでは?」といった意見が見受けられ、ハッとしました。「そういう考え方をする人もいるんだなー」と。今回は、この屋村の乾パン拒否の理由と、彼を取り巻く朝田家との関係性、戦時下という時代背景について詳しく解説します。

『あんぱん』屋村が乾パン製造を拒否した理由とは?戦時下の葛藤と朝田家の決断

屋村が乾パン製造を拒否した本当の理由

屋村が乾パン製造を拒否したのは、単なる職人のわがままではありません。実はその背景には、戦争に対する強い反発心と個人的な信念が深く関係しています。朝田パンに軍からの乾パン製造依頼が入った際、家族は一様に喜び、経済的にも大きな機会と捉えていました。しかし、屋村だけは「嫌だ」「勝手に焼けばいい」と頑なな態度を崩しません。

視聴者の中には、「なぜ屋村が作らないと朝田家全体が断るのか?」という疑問の声もありましたが、屋村は単なる従業員ではなく、朝田パンの要であり、パン作りの心臓部ともいえる存在です。彼の意志を無視して事を進めることは、単に仕事を分担する以上の意味を持つのです。

朝田家の戦争との距離感と家族の苦悩

朝田家には、戦争で家族同然の豪を失った過去があります。特に、結婚を約束していた蘭子(河合優実)は、その記憶を鮮明に残しており、戦争に対する感情も複雑です。母・羽多子(江口のりこ)も、娘の気持ちが痛いほどわかるだけに、戦争に反対する屋村や同調する蘭子の気持ちを尊重したいのです。そのため、軍からの依頼に対しては、単純に喜ぶことができない心理的な葛藤が存在していました。

また、パン作りの責任者である屋村の意志を無視して乾パンを製造することは、彼を裏切る行為に等しく、朝田家の中での信頼関係にも大きな影を落とす可能性があったのです。その結果、羽多子は「無理強いはできない」として依頼を断る決断を下します。

婦人会と社会的圧力の象徴

婦人会のメンバーたちは、乾パン製造の依頼を「名誉な任務」と捉え、朝田家が軍からの依頼を断ることに疑問を呈します。これは、当時の社会がいかに軍に依存していたかを象徴しています。軍からの依頼はすなわち経済的な安定や社会的な評価を意味しており、それを断ることは社会全体への反逆とも取られかねないものでした。

このような状況の中で、屋村と蘭子が共有しているのは、戦争協力に対する強い倫理的な抵抗感です。物語では、彼らが自らの信念を曲げずに行動する姿が描かれ、それがドラマ全体のテーマである「信念と選択」に繋がっているのです。

SNSでの反応と視聴者の葛藤

放送後、X(旧Twitter)を中心に、「ヤムさんが作らないなら他の人がやれば良いのでは?」「子供たちと一緒に乾パン作ってたのは何だったの?」といった声が相次ぎました。

しかし、このような感情的な反応こそが、ドラマの持つ深みを象徴しています。単なるストーリーの進行ではなく、視聴者自身にも道義的な選択を突きつける構造が、『あんぱん』の魅力でもあるのです。

阿部サダヲが演じる屋村という存在

屋村を演じる阿部サダヲさんは、これまでも数々の映画やドラマで独特な存在感を示してきました。たとえば、映画『舞妓Haaaan!!!』(2007年)では軽妙なコメディセンスを披露し、大河ドラマ『いだてん』(2019年)ではシリアスな役柄にも挑戦しています。

今回の『あんぱん』では、戦争という重いテーマの中で葛藤する職人を見事に演じ、その演技力の高さが改めて評価されています。彼の表情一つで、言葉以上の感情が伝わるシーンも多く、屋村という人物の複雑さと重みを視聴者に強く印象づけています。

まとめ:ドラマ『あんぱん』が描く信念と時代の狭間

『あんぱん』第44話で描かれた乾パン製造を巡る葛藤は、単なる物語上の出来事ではなく、戦時下の倫理観や人間関係を深く掘り下げた重要なエピソードでした。屋村が乾パンを焼かないという選択には、彼自身の過去や信念が深く関わっており、私達にも大きな問いを投げかけます。

戦争という時代背景の中で、自分の信念を貫くことの難しさと尊さを描いたこのエピソードは、多くの人にとって記憶に残るものとなったのではないでしょうか。

引用元:『あんぱん』ヤムおんちゃんが拒否した”乾パン”「朝田家で作れば?」「もしかして焼けないの?」ネットは疑問だらけ