朝ドラ『あんぱん』第53回で明かされた、八木上等兵が幹部候補生の試験をあえて受けない理由について、みなさんはどう思いましたか?
今回は、なぜ八木上等兵が試験を拒んだのか、その背後にある静かな抵抗の意味や、彼のモデルとなった人物たち、そしてやなせたかしさんが込めた「正義」のメッセージについて、じっくり掘り下げてみたいと思います。
八木上等兵の言葉に見る「ささやかな抵抗」とは
第53回の中で、北村匠海さん演じる嵩が八木上等兵のもとを訪れ、「なぜ試験を受けないのですか?」と尋ねます。すると八木は、「こんな所で偉くなるより、一日も早くシャバに戻りたい。だから、ささやかに抵抗している」と静かに語りました。
この一言には、多くの視聴者が共感の声を寄せています。「ささやかな抵抗」というフレーズは、過酷な戦時下でも自分の信念を曲げずに生きる人間の強さを象徴しています。「戦争の愚かさをわかっていてささやかに抵抗しているのですね」といったSNSでのコメントが示すように、八木の言葉は平和を希求するメッセージとして、今の私たちの心にも響いてきます。
妻夫木聡が演じる八木信之介とはどんな人物か
八木信之介を演じるのは、数々の名作で知られる俳優・妻夫木聡さんです。映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)では繊細な大学生役を、『悪人』(2010年)では道を外れた青年役を演じて、日本アカデミー賞を受賞。また『怒り』(2016年)では複雑な心情を抱えた同性愛者の役にも挑戦しています。
そんな彼が本作で演じる八木は、軍隊という組織の中であえて出世を拒み、人間としての尊厳を守る男です。決して大声で主張するのではなく、静かな態度で自分の意思を示す姿には、妻夫木さんのこれまでのキャリアが活かされています。彼の演技によって、八木という人物がただの軍人ではなく、深い人間性を持つ存在として描かれているのです。
八木のモデルは誰?辻信太郎と新屋敷上等兵の実像
実は八木信之介というキャラクターには、実在の人物がモデルとして存在しています。それが、株式会社サンリオの創業者・辻信太郎さんと、新屋敷上等兵という二人の人物です。
辻信太郎さんは戦時中に兵役を経験し、戦後にサンリオを創業。「かわいい文化」の礎を築いた人物ですが、その背景には過酷な戦争体験があります。(甲府の大空襲も経験されています)。1966年に、やなせたかしさんの詩集を出版したことでも知られています。一方、新屋敷上等兵は、漫画家・やなせたかしさんが従軍中に出会った上官で、やなせさんに人間らしい扱いをしてくれた数少ない存在だったとされています。
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この二人の実像が八木という一人のキャラクターに投影されることで、「軍人であっても人間味を持てる」というテーマが描かれているのです。
やなせたかしが語る軍隊生活と“アンパンマン”の原点
やなせたかしさんが創作した『アンパンマン』は、「愛と勇気」がテーマですが、その原点にはやなせさん自身の戦争体験が深く関わっています。やなせさんは、軍隊生活の中で命のやりとりを目の当たりにし、「正義とはなにか」を深く考えたと語っています。
「正義は逆転しない。最後まで貫くものだ」という言葉には、信念を持って理不尽な状況に立ち向かうことの尊さが込められています。そして、パンを分け与えるアンパンマンの姿には、「自分を犠牲にしてでも他人を助ける」精神が宿っているのです。八木上等兵の言動にも、同じ精神が見え隠れします。
北村匠海演じる嵩との関係性が物語に与える影響
嵩は、神野班長の取り計らいによって試験を受けたものの、居眠りが原因で乙種幹部候補生にとどまりました。その決定に不満は無かった崇ですが、八木の「ささやかな抵抗」という考え方に触れることで、自分の立場やこれからの生き方を見つめ直す契機を得たのです。
この二人の関係性は、師弟でもなく、敵対関係でもない。だからこそ、八木の行動や言葉が、嵩にとって大きな意味を持つようになるのです。平和の価値を理解し始めた嵩の今後の成長にも、注目が集まります。
朝ドラ『あんぱん』に込められた戦争と正義のメッセージ
朝の時間帯に放送されるドラマとしては異色ともいえる戦争の描写。しかし『あんぱん』は、やなせたかしさんの半生を描くにあたって、その原体験を丁寧に描くことにこだわっています。
「正義とはなにか」「人間らしく生きるとはどういうことか」。この作品には、子どもから大人までが考えるべき普遍的なテーマが込められているのです。そして、その先に描かれるのが、愛と勇気の象徴=アンパンマンへとつながっていきます。
視聴者の声と今後の展開予想
SNSでは、「八木の抵抗に泣いた」「こんな人がいたからこそ、やなせさんは軍隊生活を乗り越えられたんだ」といったコメントが多く寄せられています。八木のような人物は、過去にも現在にも存在しているはず。だからこそ、彼の存在が胸に刺さるのです。
今後の展開として、嵩が八木の意思をどのように受け継いでいくのか。そして、八木自身が戦争という現実の中でどう変化していくのか。視聴者としても目が離せません。
情報元:『あんぱん』“変わり者”八木が試験を受けない理由 視聴者「普通の感情を持っていたんだ」