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約70年ぶりの改定になるか!ローマ字表記がヘボン式に統一される?

約70年ぶりの見直し!ローマ字表記の未来とは? コラム

文化審議会の小委員会が、日本語のローマ字表記の見直しについて議論を進め、3月11日に今期の審議を大まかにまとめた。新たな方針として、基本的にヘボン式を採用し、長音を符号(マクロン)で表現することを示した。これが決定すれば、日本語のローマ字表記において約70年ぶりの大きな改定となる。


なぜ今、ローマ字表記を見直すのか?

現在のローマ字表記には、1954年に発表された内閣告示に基づき、訓令式が公式なものとされてきた。しかし、現実にはヘボン式が広く普及し、パスポートや駅名、企業名などで用いられている。特に、「ち」を「ti」と表記する訓令式よりも、「chi」とするヘボン式のほうが一般に馴染み深い。そのため、国際的な標準としての統一が求められ、今回の見直しに至った。


ヘボン式が基本に!新たなローマ字表記の方針とは?

小委員会は、以下のような方針を示した。

長音の表記にマクロンを採用

日本語の長音は、母音の上に「-(マクロン)」を付けて表記することを基本とする。例えば、「母さん」は「kāsan」となる。ただし、符号を使わない場合は、母音を重ねて「kaasan」とすることも認める。

はねる音(撥音)は「n」で統一

「あんまん」は「anman」、「乾杯」は「kanpai」といった形で、「ん」は「n」として表記される。

つまる音(促音)は子音を重ねる

「鉄板」は「teppan」、「日直」は「nicchoku」といった形で、促音(っ)は子音を重ねる方式を採用する。


国際的に普及した表記は変更なし!柔軟な対応へ

ただし、すぐにすべての表記を変更するわけではない。特に国際的に普及している表記については、無理に変更を求めず、人名や団体名についても「関係者の意向を尊重する」としている。これは、日本企業やブランドの名称などが既にヘボン式で定着しているため、不必要な混乱を避けるための配慮といえる。


ヘボン式 vs. 訓令式 その違いとは?

ローマ字表記には、ヘボン式と訓令式という2つの代表的な方式がある。それぞれの違いを簡単にまとめると、以下のようになる。

基本的な考え方

  • ヘボン式:英語話者が読みやすいように設計された表記
  • 訓令式:日本語の音韻に基づいた規則的な表記

主な表記の違い

日本語ヘボン式訓令式
shisi
chiti
tsutu
fuhu
じゃjazya
ちゃchatya

「ん」の表記

  • ヘボン式:「b、m、p」の前では「m」を使用(例:「新聞」→Shimbun)
  • 訓令式:常に「n」を使用(例:「新聞」→Sinbun)

使用場面の違い

  • ヘボン式:パスポート、企業名、鉄道駅名など国際的な場面で広く使用
  • 訓令式:日本の学校教育や公的な文書で採用されることが多い

ヘボン式と訓令式の歴史的背景

ローマ字表記の歴史をさかのぼると、ヘボン式と訓令式がどのように誕生し、競合してきたのかが見えてくる。

ヘボン式の歴史

1867年、アメリカ人宣教師ジェームズ・カーティス・ヘボンが日本語-英語辞典を出版し、新たなローマ字表記システムを導入。英語話者にとって直感的に読みやすい表記が特徴であり、その後も改訂を重ねながら広まった。

訓令式の誕生

1937年、日本政府は「より規則的で日本語に合った表記」として訓令式を採用。戦後の1954年には一部修正を加えて正式に告示された。

戦後の混乱とヘボン式の広がり

戦後、日本はGHQの占領下にあり、ダグラス・マッカーサー司令官がヘボン式の使用を指示。これにより、ヘボン式が国際的な場面で普及し、一方で訓令式は学校教育など限られた場面で用いられることになった。


今後の議論とローマ字表記の未来

今回の見直しでは、ヘボン式の採用と長音のマクロン表記が大きなポイントとなった。しかし、4月以降もさらに議論が深められ、具体的な答申案が検討される予定である。

ローマ字表記のルールが統一されることで、日本語の表記がより国際的に整備され、外国人にとっても理解しやすいものになることが期待される。今後の審議の行方に注目が集まる。


まとめ

約70年ぶりのローマ字表記の見直しは、日本語の国際的な発信力を高める大きな一歩となる。ヘボン式を基本としながらも、長音のマクロン表記や既存の表記の尊重といった柔軟な対応が求められている。今後の議論がどのように進むのか、引き続き注目したい。