『ねないこだれだ』の作者・せなけいこさん、92歳で永眠――世代を超えた絵本の魔術師
日本中の子どもたちを夢中にさせた不朽の名作『ねないこだれだ』の作者、せなけいこさんが92歳でその生涯を閉じました。
351万部を超える大ベストセラーとなったこの絵本は、半世紀以上にわたり多くの子どもたちに愛され続けています。
せなさんの死去の知らせは、福音館書店の公式アカウントを通じて発表され、その功績を称える声が広がっています。
私もびっくりしました。
せなけいこさんの絵本は、「読んだことが一度もない」という子どもを探すのが難しいくらい、日本中、いや、世界中の子どもを魅了している、と言ってもかごんでは無いでしょう。
私の子どもたちも、絵本がボロボロになるくらい、読んでいました。
武井武雄に師事し、貼り絵技法を確立した若き日々
1931年、東京に生まれたせなけいこさんは、幼少期から絵に親しむ環境で育ちました。
彼女は、戦後の日本で新たな芸術の息吹を感じ、絵の世界へと進みます。
絵本作家としての第一歩を踏み出すため、せなさんは著名な絵本作家・武井武雄氏に師事しました。
武井氏からの指導を受けながら、彼女は独自の「貼り絵」技法を確立していきます。
紙や布を使って登場人物や風景を表現するこの手法は、温かみのある独特の世界観を形づくり、後の作品にも色濃く反映されています。
『いやだいやだ』シリーズでのデビューと初の受賞
せなさんが絵本作家としてデビューを果たしたのは1969年。
デビュー作となった『いやだいやだ』は、そのシンプルな表現の中に幼児の心を見事に捉えた名作で、発表当初から多くの親子に支持されました。
このシリーズの成功により、彼女は翌1970年にサンケイ児童出版文化賞を受賞。
絵本作家としての確固たる地位を築き上げました。
『いやだいやだ』は、子どもたちの「わがまま」や「反発心」をユーモアたっぷりに描いており、大人にも共感を呼ぶ内容です。
シリーズ累計は152万部を突破し、今なお多くの家庭で読み継がれています。
『ねないこだれだ』――夜の恐怖をユーモアで包む大ヒット作
1970年に出版された『ねないこだれだ』は、眠らない子どもにおばけがやってくるというシンプルでわかりやすいストーリーで、日本の絵本史に残る大ヒット作となりました。
この作品は「214刷」という驚異的な記録を持ち、せなさんの代表作として不動の地位を誇っています。
『ねないこだれだ』は、子どもたちに「夜は寝るもの」という生活習慣を教える一方で、その語り口や貼り絵のビジュアルが不思議な魅力を放ち、読者を惹きつけてやみません。
おばけという怖さの中に、どこか親しみを感じさせるその世界観が、子どもたちの心に深く残り続けているのです。
名作『おばけのてんぷら』や『めがねうさぎ』――多彩な作品群
せなけいこさんは、『あーんあん』や『おばけのてんぷら』、『めがねうさぎ』といった作品も次々と発表しました。
これらの絵本は、ユーモアと心温まるメッセージを兼ね備え、幅広い年齢層の子どもたちに親しまれています。
特に『めがねうさぎ』は、メガネをかけた主人公が登場することで、同じ境遇の子どもたちにとって大きな励ましとなる作品として愛されています。
これらの作品には一貫して、せなさん独自の「ユーモアの中に潜む優しさ」が息づいています。
彼女の絵本は、子どもたちに教訓を押し付けるのではなく、物語の中で自然に学びを得られる構成が特徴です。
創作の軌跡を語った自伝『ねないこはわたし』
2016年、せなけいこさんは自伝『ねないこはわたし』を出版し、自身の半生と創作の軌跡を読者と共有しました。
自伝の中で彼女は、絵本作家としての苦悩や喜び、インスピレーションを語り、読者に「せなけいこ」という人物の内面を垣間見せています。
『ねないこはわたし』というタイトルは、代表作『ねないこだれだ』に自分自身を重ね合わせたもの。
彼女は絵本を通じて、読者に「ただの子ども向けの読み物」ではなく、人間の心の深層に響く物語を届けたいと願っていました。
せなけいこさんの訃報と、その功績を称える声
せなさんの訃報を受け、多くのファンや関係者から追悼の声が寄せられています。
福音館書店は公式アカウントを通じて「彼女の作品は、世代を超えて読み継がれる日本の児童文学の重要な財産です」とコメントを発表しました。
その言葉の通り、せなさんが生み出した物語は、今後も日本中の親子に読み継がれていくことでしょう。
世代を超えて愛され続ける「絵本の魔術師」
せなけいこさんが残した作品は、単なる児童書にとどまらず、世代を超えた普遍的な価値を持っています。
子どもたちの心の成長を促し、大人たちには忘れていた感情を呼び起こす――そのような彼女の絵本は、日本の文学史においても特別な位置を占めています。
彼女の描く物語は、これからも多くの読者に温かさと学びを提供し続けるでしょう。
そして『ねないこだれだ』のような名作は、親から子へ、子から孫へと、語り継がれていくに違いありません。
せなけいこさんの功績に心からの感謝と敬意を捧げます。