「海のはじまり」に登場する「くまとやまねこ」が教えてくれたこと

「海のはじまり」に出てくる絵本「くまとやまねこ」 人気ドラマの感想

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ドラマ「海のはじまり」は、ラストに差し掛かるにつれて、親子関係や、親しい人の死、妊娠と出産、子育て、恋人たちの苦悩などなど、さまざまな問題が一揆に噴出してきて、気持ちの整理ができなくなります。

それでも、自分の身に起きたら?今までの人生を振り返って似たようなことはなかった?と思うと、とても、「あり得ない出来事」とは思えないんですよね。

夏、水季、海、弥生、それに、夏と水季の家族の心情を思うと、誰が悪いなんて、簡単なことでは済ませられない見につまされるものがあります。

そこで、今回の11話でクローズアップされていた、海が水季に贈られたという「くまとやまねこ」について、書いてみようと思います。

このドラマで伝えたいことの大部分が、絵本「くまとやまねこ」に詰まっていると思うから。

悲しみと再生の物語『くまとやまねこ』感動を呼ぶ絵本の魅力

絵本『くまとやまねこ』は、2008年に河出書房新社から出版され、湯本香樹実さんが文を、酒井駒子さんが絵を手がけた作品です。

この絵本は、悲しみと友情、そして再生のテーマをやさしく描き、読者に深い感動を与えています。

特に、親友のことりを失ったくまが新しい友達と出会い、少しずつ悲しみを乗り越えていく過程が丁寧に描かれ、子どもから大人まで幅広い層に共感を呼んでいます。

受賞歴に輝く名作

『くまとやまねこ』は、第40回講談社出版文化賞絵本賞を受賞し、湯本さんと酒井さんのコンビによる作品は、国内外で高く評価されています。

短い文章とシンプルな絵を通じて、感情の深みが巧みに表現されており、特に酒井さんの絵は、物語の感情を豊かに引き立て、読者に強い印象を残します。

この絵本が描くのは、単なる友情の物語ではありません。

くまが親友を失い、深い悲しみに沈む様子は、まさに誰もが経験し得る喪失の痛み。

しかし、その喪失から再び立ち上がり、新しい希望を見つける過程が美しく描かれていることが、この絵本の大きな魅力なのです。

くまの悲しみと再生への道

物語の主人公であるくまは、最初に親友のことりを亡くした時、深い悲しみに囚われます。

その悲しみは、部屋に閉じこもり、外の世界と断絶してしまうほど大きなものでした。

ことりの存在がくまにとってどれほど大切であったか、その喪失感が胸に迫ります。

しかし、くまの再生の物語はここから始まります。

くまはやまねことの出会いをきっかけに、少しずつ生きる力を取り戻していくのです。

この再生のプロセスが非常に繊細に描かれており、特にやまねことの音楽を通じてくまの心が癒され、再び未来に希望を見出す姿が感動的です。

音楽を奏でるシーンは、まるで読者自身がくまの心の内側に寄り添い、共に悲しみを癒していくような感覚を与えてくれるでしょう。

テーマとメッセージ 悲しみを乗り越える力

この絵本が持つ重要なテーマの一つは、「悲しみを乗り越える力」。

くまは、最初はことりの死を受け入れられず、深い悲しみに沈み込んでしまいますが、やまねことの交流を通じて少しずつ心を開いていきます。

やまねことの音楽団としての旅は、くまが再び外の世界と向き合い、悲しみを乗り越え、新しい楽しみや喜びを見つける象徴的なシーンです。

この物語が伝えるメッセージは、ただ悲しみを乗り越えるだけではなく、誰かと共に生きていくこと、そしてその過程で得られる喜びや共感の大切さです。

くまがやまねことの時間を通じて新しい自分を発見し、成長していく姿は、読者に「悲しみを一人で抱え込む必要はない」という温かいメッセージを送ります。

特に、くまとやまねこが共に旅をし、音楽を楽しむ場面は、再生と希望の象徴として強く心に残ります。

共感の力?孤独を癒す新たな出会い

『くまとやまねこ』は、喪失の悲しみだけでなく、共感と友情の力が描かれています。

やまねこは、くまの悲しみを無理に取り去ろうとはせず、ただそばに寄り添い、一緒に音楽を奏でます。

この姿勢は、「相手の痛みを理解し、その悲しみに寄り添うこと」の大切さを教えてくれます。

くまとやまねこの間に生まれる友情は、言葉ではなく行動を通じて深まっていきます。

やまねこがくまに無理強いをせず、共に時を過ごすことで、くまは少しずつ心の中の悲しみを解き放っていくのです。

絵本全体を通して、くまとやまねこの音楽団の旅は、くまが再び世界と向き合い、未来に希望を持って歩み始める象徴的な描写です。

この旅は、読者に対して「悲しみはいつか癒え、新しい楽しみや出会いが訪れる」という前向きなメッセージを伝えます。

特に、やまねことの出会いを通じて、くまが孤独から解放されていく姿は、多くの人が経験する「喪失からの再生」の普遍的なテーマを反映していると言えるでしょう。

シンプルな表現に込められた深い感情

『くまとやまねこ』の文章は短く、絵もシンプルですが、その中に込められた感情は非常に豊か。

湯本香樹実さんの文章は、一つ一つの言葉が慎重に選ばれ、無駄がなく、簡潔でありながらも感情の深さが感じられます。

また、酒井駒子さんの絵は、色彩やタッチが柔らかく、くまとやまねこの表情や風景が感情を繊細に表現しています。

このシンプルさが、かえって読者の心に深く響く要因となっており、子どもにも分かりやすい一方で、大人の心にも深く訴えかけるのです。

大人も子どもも共感できる絵本の魅力

『くまとやまねこ』は、子ども向けの絵本として出版されましたが、そのテーマやメッセージは大人にも深い感動を与えるものです。

喪失、悲しみ、そして再生という普遍的なテーマが描かれているため、幅広い世代にとって心に響く作品となっています。

くまとやまねこの友情の物語は、誰もが経験する「大切な人との別れ」や「新しい出会い」の象徴であり、その再生の過程を通じて読者に「希望」の存在を優しく教えてくれます。

最終回で夏と海との関係は深まる?そして弥生は?

海は、お母さんから託されたこの絵本を何度も読めば「お母さんの死」を理解できる、と子供なりに解釈したのでしょう。

だけど、何度読んでも、悲しい気持ちから解放されないし、「どうしてママが居なくなったのか?」はわからないまま。

そんな気持ちも夏にぶつけられるようになったと考えると、二人の関係は、少しづつでも進展しているのかな?と思いますね。

今は、心がすれ違ってしまった夏と海、という感じに見えますが・・・

とにかく、夏は、一生懸命だけど、いろいろな意味で不器用だから、そんな海の気持ちにただ困惑するばかり、なのでしょう。

もっと、周りに助けを求めれば良いのに、一人で頑張ってしまうところも、夏の不器用さ、生真面目さゆえなんだと思います。

そんな二人の関係を、うまくとりなしているのが、「友達」になった弥生さんですよね。

このまま、ママではなく「友達」として、海との関係を築いていくのか?

最終的には親子になるのか?

海が、祖父と祖母の元に帰り、夏が親権だけ持つのか?

あるいは、海の祖父母や夏の両親、大和、津野さん、そして弥生の力を借りながら、夏の家で二人暮らしを続けるのか?

最終回が楽しみでもあり怖くもありますが、それぞれが幸せに向かっての着地なら、どんな形でも受け入れられそうです。

もしかしたら、数年後、海ちゃんが成長した姿で終わる、というのもありなのかな?

きっと、「ハッピーエンド」というような単純な終わりではなさそうですが、最後まで見守りたいと思います。